Ryo's Diary

日常で感じた違和感や心が動いた体験を書き留めています。主なテーマは仕事、本、吃音など。

報われない恋だとしても

「君が婚活を始めるまでの間でいいから、付き合っていることにしてもいいかな」

彼女との交際開始は、決してロマンチックなものではなかった。期間限定の恋愛だから、周りに公表することもしない。

一緒にいると楽しいし、気を遣わずいられる関係。体の相性だって悪くない。もういい年齢だし、僕は結婚を前提に付き合ってもいいと思っていたけど、彼女は僕との結婚を考えてはいなかった。

お互いに辛い経験をしてきた僕たちは、生きることに必死だった。波のように押し寄せてくる苦しみに耐え続けて今がある。

「ありのままの自分を愛してくれる人といることで幸せになれる。だから私より穏やかな人のほうが合ってるよ」と彼女に言われた。

「僕は君の前だとありのままにいられるよ」と伝えて説得しようとしても彼女は引き下がらない。どうして頑なに僕との結婚を拒むのか強引に聞き出したら、価値観や感性の違いから「ピタッとハマる感じがしない」と言われた。

君がそういう考えならば、割り切って付き合おうじゃないか。それも悪くない。それでも、会えば会うほど彼女に惹かれていく自分がいた。

「私はそんなに愛情を与えていないのに、どうしてこんなにも愛情をくれるの」

「僕が好きで大切にしたいだけだから。君がどう思っていようと関係ない」

「私がもし他の人を好きになったらどうするの」

「そのときはその人との恋が上手くいくことを応援するよ。僕にとって一番の願いは、今までたくさん辛い経験をしてきた君が幸せになることだから」

「あなたは辛くないの」

「好きな人が自分を好きになってくれるなんて奇跡だと思う。だから僕は、こんなに人を好きになる経験をさせてくれたことに感謝している。これ以上のことは望めないよ」

「そんなの切なすぎるよ」

泣きそうな顔で君が答える。どうして君が泣くの、泣きたいのは僕のほうなのに。なんて、どこかで聞いたことあるようなフレーズが頭をよぎる。

「僕のことを好きにさせてあげられなくてごめんね」

「ちゃんと好きにさせてるよ」

「でも、僕とは結婚できないんでしょ」

「結婚はまた別だから」

その日以来、将来についての話題をすることは控えるようにしている。ただ一緒にいられる今この瞬間を大切にしたい。それなのに「二人で一緒に暮らしたら楽しそうだね」なんて君は軽はずみに口にする。

「将来のことを考えなかったらもっと一緒にいられたのにね。僕たち、出会うのが遅すぎたのかな」なんてドラマみたいなセリフを言って一緒に笑い合っていたけど、僕がどれだけ切ない気持ちになっていたかなんて君は知らないだろう。

例え報われない恋だとしても、彼女と一緒にいられる時間を手放したくない。他に気になる人ができたらデートに誘ってもいいし、結婚相談所に登録してもいいなんて、自ら都合のいい男に成り下がりすぎてるよね。

人は優しくされたら好きになるのではなく、優しくした方がその相手のことを好きになるらしい。恋愛心理学でも、僕の過去の恋愛を振り返っても実証済みだ。

わかっているのに相手に優しくしすぎてしまうのは、これしか愛情を伝える方法を知らないからだろう。君はそれも悪くないって言ってくれたけど、好きな人に振り向いてもらえないのならもっと別の愛し方を探さなければいけないのかもしれない。

それでも僕は、残された時間で溢れるほどの愛情と優しさを彼女に与えたい。今の僕がしてあげられることはそのくらいしかないから。