Ryo's Diary

日常で感じた違和感や心が動いた体験を書き留めています。主なテーマは仕事、本、吃音など。

映画「Start Line」


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耳が聞こえない映画監督今村彩子さんが自ら自転車で日本縦断するドキュメンタリー映画「Start Line」を鑑賞してきました。

 

聞こえないというハンディキャップを抱えながら日本縦断をする中で人と生じるコミュニケーションの壁をテーマにされた作品ですが、私はどちらかというと旅に憧れがあって旅人の紀行文を読んだりするのが好きなのでそういう意味でもこの映画を楽しみにしていました。

 

作中では道を尋ねたり現地で出会った人達と話したりと様々なコミュニケーションの場面が出てきます。ですが「口の動きが読みにくいから」「同じ質問をしてしまったら迷惑だから」など言い訳をして積極的に話せずにいる今村さんの姿が、吃音があり人と話すことを苦手としている自分の姿と重なり共感しながら観ていました。

 

道で自転車がパンクして困っている人がいるのに見て見ぬふりをして通り過ぎてしまう場面。「自分で空気を入れていたから大丈夫かと思った」と話している姿を見て、もし自分でも同じことを言っていたかもしれないと思いました。

 

例えば私も複数の人達が話している輪に入ることが苦手で、「自分が話すと会話の流れを止めてしまうから」と自分では気を遣っているつもりだったけど、改めて考えると話すことから逃げるために自分を正当化する言い訳をしていただけなんだなって気付くことができました。

 

後半では聴力を失ったサイクリスト、ウィルの前向きな考え方や行動に勇気をもらい感動しました。伴走者の哲さんの厳しくとも優しい言葉、今村さんの叱られすぎて暴走したくなる気持ちや不甲斐ない自分への悔しさなど全てが心に響いて思わず涙してしまう場面もありました。

 

一番印象的だったのは、旅の終わりを迎える直前になっても旅の答えを見付けることができなくて、最後勇気を出して多くの旅人が集まるライダーハウスに向かった場面です。

 

私が昔から旅に憧れがあるのは、旅をすれば積極的で見たこともない自分に出会えるのではないかと想像してそんな自分を夢見ていたからです。でもこの映画を観て、ただ旅をするだけではなくてそこで出会う困難に勇気を出して一歩踏み出すことの積み重ねがきっとその人を成長させていくんだろうなって気付かせてもらうことができました。

 

映画の上映が終わり質疑応答の時間があったので手を上げて私の感想を言わせていただきました。実は、感想を言おうと決めたときからすごく緊張して上手く話せるか不安だったけど、今村さんが普通の人なら絶対に見せたくないはずの姿を勇気を出して映画にして見せてくれたから、私もその気持ちに応えなければいけないなと思った。

 

この映画は障害がなくても人とのコミュニケーションを苦手としている人には是非観てもらいたい作品です。自分を見つめ直し新しいスタートラインに立たせてくれる、とても素敵な映画でした。