Ryo's Diary

日常で感じた違和感や心が動いた体験を書き留めています。主なテーマは仕事、本、吃音など。

吃音と通院歴、STへのお願い

近々、吃音の体験談発表をする機会があるので自身の吃音との関わりを思い出しながらアウトプットしています。

 

高校1年生のとき、吃音ではもちろん悩んでいたけど、昼夜逆転の生活で睡眠時間が2~3時間しか取れないことも大きなストレスだったので脳神経外科を受診しました。

 

睡眠薬をもらいつつ、当時は吃音という言葉も知らなかったので、「話そうとしても言葉が出てこなくて困っている」という風に医師に相談しました。高校生の頃は難発だったので「話そうとしても呼吸が止まって苦しくなる」という説明をしたら、「ストレスはありますか」とか「モヤモヤ病かもしれない」と言われ、MRIやMRAといった検査を受けました。結果はやはり異常なし。原因はわからず抗不安薬を処方されただけでした。

※この頃は人前で絶対にどもらないようにしていたので、連発になりそうな言葉は極力避けるか無言の時間が続いても時間をかけて言っていたので、相手からは吃音があるとは気付かれなかった。

 

その後高校2年生になり、吃音という言葉を初めて知りました。ネットで調べると耳鼻科が吃音を診ていると書いてあったので、実家近くの耳鼻科を受診しました。口や鼻の中など目視で確認されて異常はないと言われましたが、「大学病院で吃音の訓練をしているから」と紹介状を書いてくれました。後日、大学病院の言語外来を受診しました。

 

大学病院では「ジャックと豆の木」の音読をしたり、僕が吃音で悩んでいることを打ち明けました。しかしそこで言われたのは、「あなたの症状は軽いから気にすることはない」「もっと症状の重い人がいる。少しどもったくらいのことで気にしてはいけない」「あなたが大人になって、例えば空手の先生でもやるようになったら吃音なんて治ってるよ」といった内容でした。正直、期待外れにもほどがありました。

 

そんなことを言われても何も解決しない。症状が軽かったのはたまたま静かで話しやすい場所だったからだし、普段親と話すときは2、3語文すらまともに出てこない。第一、知り合いの空手の先生に症状の重い連発の人がいて、稽古に参加している子どもの保護者がその姿を見て笑っていたのを見たこともあるので、そんな話が信じられるはずがなかった。

 

実は親に吃音のことで病院に行きたいと伝えたところ、かなり口論になりました。「いま普通に話せとるがん」「もし言葉が出てこなかったとしても、『ちょっと待ってて』って言えばいいだけじゃないん」「そんなに病院行きたきゃ勝手に行けばいいがん」と僕の気持ちを全く理解してくれない、しようともしない発言にうんざりしていました。だから、病院で「あなたは障害者です」と断言してくれた方が、みんな僕の気持ちをわかってくれる、僕の吃音に真剣に向き合ってくれると信じていました。受診後「やっぱりあんたの考えすぎやわいね」と親に言われたのがとてもショックでした。吃音を気にしないなんて絶対に無理だし、もうなす術がないと無力感と絶望に襲われました。

 

このような経緯から、当時言語外来の先生にどういう対応をして欲しかったのか当事者目線で書いていきます。

 

まずは、その人が吃音でどのように悩んでいたり困っているのかしっかり聞いてあげてほしいです。一人で悩みを抱え込みやすい吃音者にとって、誰かに話を聞いてもらうだけでも心が軽くなることがあるから。

 

その上で「それは辛かったですね」というように、吃音で悩んでいることを肯定する言葉をかけてあげてほしい。この一言があるだけで「この人は私のことを分かってくれている」と安心できるから。

 

しかしながら、STでも吃音についての知識はほとんど無いって人は少なくないと思います。それ以上は何もしてあげられないかもしれません。だからせめて、その人が次のアクションを起こせるような手がかりを何かひとつでも与えてあげてほしいなと思います。

 

例えば、言友会のようなセルフヘルプグループを紹介する。他の訓練をしていたり知識のある先生を紹介するなど。「うちでは吃音は診てないので...」と受診拒否されることもたまにあるみたいです。

 

吃音者にとって、悩みを無くすには「吃音を治すしかない」と思い込んでいる人が多いと思います。僕もそうでした。もちろん訓練をすることで症状が軽くなれば、悩みも軽くなるでしょう。しかし、訓練の成果には個人差があるし、そのための時間や費用もそれなりにかかるはずです。

 

だから吃音に対する受け止め方を変えることでも悩みを軽くできるということを知ってほしい。そのためには、言友会に参加したり、カウンセリングを受けたり、認知行動療法アドラー心理学について勉強したり、カミングアウトや環境調整など様々なアプローチが挙げられます。ハードルは高く感じられるかもしれないけど、悩みを軽くすることが目的ならこっちの方が近道の場合もあります。

 

もちろん悩みは軽くなるとはいえ、生き辛さは残るし、僕の場合大声での会話や飲み会での早いテンポの会話についていくなど諦めていることもあります。仕事も場合によって妥協する必要があるかもしれません。だから、どうしても吃音を治してやりたいことがあるなら、吃音改善の訓練を受けることをおすすめします。今では吃音当事者STがたくさんいて、訓練できる人も増えてきました。

 

大切なのは、その人の悩みの本質を見抜くことかなと思います。それは自分自身でも気付いていない場合がほとんどだから。顧客が気付かない課題を考え解決策を創造するという、問題解決のビジネス書ではよくある話です。

 

とはいえ、普通のSTにここまで求めるのは酷だと思います。仮に受診に来られても吃音の知識がなくて何もできないくらいなら、その時間を他の障害を持つ人たちの訓練に当てた方が良いのかもしれません。第一、社会人はやることに追われていてそこまで考えたり相手をする余裕がない場合もあるでしょう。

 

それに何から何まで他人に教えてもらうのも、その人のためにならないかもしれない。人が変わるときって、自分で考えて行動して、上手くいかなかったら軌道修正してそれが成功して自信になって...といったプロセスを歩むことが大切だから。流されるままに色々試しているだけではきっと変われない。知識があると色々教えたくなってしまうけど、自分で問題と向き合い成長するチャンスを奪ってしまう可能性だってある。

 

とりあえず、「あなたの症状は軽いから気にしなくていい」なんて表面的な症状だけをみて軽はずみな言葉をかけるのだけはやめて欲しいです。受診に来ているという時点で、思いつめている可能性が高いし、予約するのにも勇気を出して電話したかもしれないから。

 

おしまい。